「今日の野菜は、こんなに鮮やかなんだ…」
届いた段ボールを開けた瞬間、
ふわっと土の香りが広がりました。
きゅうりの緑、にんじんのオレンジ、葉物野菜のやわらかさ。
スーパーではあまり感じられなかった「自然なままの命」が、
そこにあるような気がして、私は少し泣きそうになってしまいました。
私はもともと、スーパーでの買い物が苦手です。
人の視線、ざわざわした音、レジでうまく袋に詰められない自分…。
どれもがプレッシャーで、
買い物が「行かなきゃいけない用事」ではなく、
「行けたらラッキーな挑戦」になっていました。
宅配野菜に興味を持ったのは、SNSで見かけた投稿がきっかけ。
「自分のペースで野菜と向き合える時間が好き」という言葉に惹かれて、
思い切ってお試しセットを頼んでみたんです。
最初に届いたセットには、見たことのない名前の野菜が混じっていて、
「のらぼう菜?なにそれ?」と戸惑いつつ、
レシピを調べて小さなフライパンで炒めてみました。
それが驚くほどおいしくて、しばらく口の中で噛みしめるほどでした。
気づいたら、毎週その段ボールが届くのを楽しみにしている自分がいました。
野菜たちが「よく来たね」と話しかけてくれるような、
そんな不思議な安心感に包まれたんです。
買い物をするという行為に、これほどまで心をすり減らしていたのかと、
自分でも驚きました。
レジに並ぶストレスも、商品の棚を探す焦りもない。
ただ、家で受け取るだけ。
料理が少し楽しくなったことで、
自分の中に「できることがある」という自信も芽生えました。
たった数本のにんじんが、
そんな気持ちを連れてきてくれるなんて、不思議ですね。
今では、届いた野菜の写真を撮って、
料理の記録をつけるのがちょっとした日課です。
特別なことじゃなくていい。
ただ、安心して過ごせる場所で、自分らしいペースで暮らしていく。
その中に、こういう「小さなよろこび」があるのって、
本当にありがたいことだなと感じています。
小さな安心が、毎日の気持ちをふわっと明るくしてくれます。